「映画・書籍装丁に見るロゴマーク」の第8回です。
書籍の装丁の中で珍しいパターンとして、著者自身の写真が使われるものがあります。前回ご紹介した『教えてください。富野です』もそのパターンなのですが、著者の写真を用いるデザインは「著者自身をさらけ出す」といった意図が含まれている場合が多いと言えます。
ところが、今回ご紹介する『パンク侍、斬られて候』の装丁は、そういった意図とは少し異なったデザインであると言えます。
ご覧の通り、著者である町田康氏の姿が装丁デザインの中心として扱われています。しかし、そこで表現しようとしているのは、著者自身というよりは作中の主人公であり、また作品の世界観です。私小説であればそういった装丁もありがちなものと言えるでしょうが、この作品の場合は時代劇であり、純然たるフィクションの世界観を表現するために著者の写真を使った非常に珍しいパターンの装丁デザインであると言えます。
ここで使用されているロゴは、シンプルな書体の白字で右上に配置されています。全体的なデザインの邪魔にならない用いられ方であり、また、時代劇らしい落ち着きを演出してもいます。背景の青空にも合ったロゴデザインであると言えますね。