家紋に見られる簡素なデザイン性とシンプルなメッセージ性は、ロゴマークのそれと通ずるところがあると言えます。
家紋のデザインの由来を解き明かしてみれば、そのメッセージの理解をより深めることが出来るでしょう。
例えば、戦国の世に名を馳せた毛利元就で有名な毛利家では、「一文字三星」という家紋が使用されました。
一文字の下に円形でそれぞれ描かれた三星は、オリオン座の真中に直列する三つの星を表現しています。
これらの星は大将軍星・左将軍星・右将軍星で構成される「三武」或いは「将軍星」と呼ばれ、武家の家紋に好んで用いられた歴史があります。
また、「一」の文字には「相手に打ち勝つ」という意味が込められており、三星と併せて用いることで更に武威を高める狙いがあったと考えられています。
同様のメッセージを持つものとして、「三星一文字」と呼ばれる家紋があります。これは、渡辺姓の代表的な家紋です。
こちらの場合は三星の下に一文字が配置されています。
構成素材が同じなので、「一文字三星」と同じく武勇を主題にしたデザインであると解釈出来ます。
三星をあしらった家紋は、武家を中心として他の家系でもしばしば使用されました。
星に対する認識に、現在ではあまり感じられない武勇のイメージがあったということなのでしょう。