「CI作成はブランディング・ブランド構築の観点で」の9回目です。
CI戦略が如何に重要かを考える上で、見過ごせない話があります。「CI戦略の失敗例」とも言える話なのですが、今回はそこから学ぶことのできる教訓について、少し考えてみようと思います。
かつて、ファッションブランド「GAP」のロゴ変更騒動というものがありました。2010年の、10月頃の話です。
ある日、GAPは突然新しいデザインのロゴを公表し、顧客たちに動揺と困惑を与えました。変更の意図も良く知らされないまま新しいデザインのロゴを見た顧客たちは、ネット上で反対論を掲げ、その「新ロゴ反対」の風潮は瞬く間に広まることとなりました。
その批判を受けてGAPは、「新ロゴのデザイン案は顧客にも関わってほしい」と、一転して公募の方針を打ち出しました。
しかし、これは火に油を注ぐ結果となります。「新ロゴが駄目だったから公募します」というのは、顧客たちからしてみれば、まるで理解し難い発言なのですね。
これはつまり、顧客たちの意識の中、ひいては世間一般の印象として、「ロゴというものは企業からのメッセージであり、そのデザインにおいては、必ずいくらかの理念が表現されているべきだ」という思いがあるという証拠でしょう。
更に言うなら、「一定のファン層を持つロゴデザインを大胆に変更することは難しい」ということも教訓として考えるべきでしょう。ファンを獲得するのは大変良いことなのですが、彼らの趣向が自社の方針に影響を与える可能性があることは、忘れないようにすべきです。
結局、GAPの新ロゴは一週間あまりで撤回され、従来通りのロゴが用いられることになりました。
ロゴを変える際には、顧客が自社に持つイメージに十分気をつけなければならない、というお話です。